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車が見えなくなった頃ユリアが私のドレスの裾を引っ張った。
「どうしたの?」
私はユリアの目線に合わせて屈み込むとユリアは恥ずかしそうに顔を赤く染めて耳元で、
「私、あの方がいいわ。」
と、言った。
「えっ?」
私が聞き返すと
「さっきのヴィンって呼ばれていた方と結婚したいわ。」
今度ははっきりとそう言った。
それから丁度よいタイミングで車がきて乗り込んでもう一度ユリアに聞こうと思った時、ユリアは気持ちよさそうな寝息をたてて寝ていた。
数日後お祖父様に私は呼び出されていた。
「エレナよ、ヴィンと言う男はどんな男か?」
予想通りの質問だった。
「一瞬でしたので私にはわかりません。」
「そうかならばよい。それと、今お兄様が来ていてな、エレナと話がしたいらしい。」
「わかりました。サットーお祖父様はどちらで?」
「薔薇園だ。」
私は薔薇園へ急いだ。
「来たか、エレナ。」
私の顔を確認したサットーお祖父様は愉快そうに笑って前の椅子を勧めた。
執事が椅子を引き座る。
「あの…。」
私が口を開くと手で制された。
「儂はお前が一番賢いと思う。」
唐突に語り出すのだ。
「ヴィレント セルジェエフスキー18歳、セルジェエフスキー伯爵の次男だ。対シャドウ学校を次席で卒業同期はミキ ルーズベント スペンサー 14歳彼女が首席だ。エレナ、君なら彼をどう思う? 」
鋭い視線で私を見た。
「彼が優秀なことはわかりました。家柄もあります。それ以上は私の口からは申し上げられません。」
サットーお祖父様は愉快そうに笑った。
「儂は賢いやつは嫌いでない。ユリアは彼を一目惚れと言った。昨日抱いたミキはなかなか強情で頭の良い奴だった。いずれ上に行く奴だろう。ヴィレントとも昨日話したが奴も人の上に立つ人だ。頭も良いし力もある。奴が聞いたらユリアにあてがうだろう。儂は否定はしない。だが、お前は十分理解しているだろう。悲しむ奴がいることとこれから一生苦しむことになるユリアのことを…」
「存じあげております。」
「お前はどう思う?」
「私はユリアの幸せを第一に考えます。ですから一目惚れと言うユリアを信じます。」
「そうか、ならば儂も同意しよう。儂が打診すれば彼らは断ることがない。」
この時のサットー様は何故このような言い方をしたのか数十年経った今、ひしひしと感じるのだ。
1 end
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