第1章

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 俺は本能的に葉の揺れを最大限に利用して体当たりした。カマキリの頭が180度傾き、動きが止まった。よくわからないが俺は勝利したのだ。頭のなかには仲間からの信号のようなものが送られてきていた。 ……☆※.ouy3(よくやった、勇者!寢楽之助)…… ……★※.0ouy3”¶(お前は俺たちの縄張りを守った!)…… ……☆※.3yyyyy♯#$(バッタの英雄!寢楽之助!!)……  え?バッタの英雄?何だそりゃ?しかし、俺にはしっかりと羽や六本の足の感覚と、やけに広い視界があった。その晩、縄張り中の雌と一晩中交尾した。まるで王様気分だった。  夜明け頃、クタクタになり地べたに横たわっていると突然、宙に舞った。どうやら小鳥にくわえられたらしい。しばらくすると、木の葉に隠れた巣に運ばれ雛の大きく開かれた口の中へ入れられた。  また、チューブ状の通路を超高速で移動し始めた。もう何が何だか訳が分からなくなって混乱してきた。しかし、チューブ内で一度急停止すると今度は後方へと引き戻される感覚を覚えながら移動を開始した。  気が付くと俺はPCの前で叫んでいた。 「ローローロー。そう、さがってええええ。頼むよおおおおお!!いくら使ってるんだっけ?」  画面にはリスナーのコメントが流れていた。 [ローローおじさんwwww] [君、その手法じゃ勝てないよ] [いくら負けてるの?] [絶対に笑ってはいけない寢楽之助バイナリー] 「うぃーうぃー!おちろー!200万デカイから!!んああああ」 [ほんとギャンブラーだな] [ばいんきたw] [たのしそうですね] [ういいいいいいいwwwwww] 「あーもう、200万溶かした。やってもーたあああっ。デカイから……。あっかん」 [ポジりすぎなんだよ] [ワンチャンあるぞ!] [昨日自分で言ったことをすぐ忘れるアホ] 「……お前より多分頭いいと思うぜ。大変申し訳ないが」  6画面のディスプレイの前で俺は為替チャートを見ながら、烈火のごとく怒っていた。一瞬で200万円が消える。こんなことがあっていいのだろうか?しばらく画面の前で呆然としていると、画面が渦を巻いてその中に吸い込まれていった。 「おい、寢楽之助っしっかりしろ!!意識はあるか?」  俺は迷彩服姿の男に声をかけられた。車外では銃撃戦が繰り広げられているようだった。 「伏せてろ。お前を救出しに来たんだ」
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