第1章

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 そういえば……俺は──記憶を辿っていくと死刑囚として服役していたことを思い出した。しかしついさっきまでマネーゲームで一喜一憂していたのだが……。 「ヘリだ撃ち落とせ!」  RPGを構えた男がすぐさま発射するとヘリは大爆発して業火をあげながら砕け散った。 「間一髪だった。神が我らを守ってくれたのだ」 「俺は何を……?」 「ん?無理もない。あれだけの拷問や人体実験を受けたのだから。だが、お前は守った。だから、我々が救いにきたのだ」 「えっ?」 「聖なる数字だ。資本主義の俗物どもには利用させない」 「なんだっけ?」 「まあ、そのうち思い出すだろう。米軍もさほど強くはなかったな」 「ここどこだ?」 「また日本は戦争してるのか!?」 「日本?お前は何を言っている。ここは極東じゃない。シリアだ。我々は異教徒と戦っているのを忘れたのか?」 「……」 「ハッハッハ。結構結構!我々はこれからさらに東進せねばならん。しかし、まずは聖地エルサレムの奪還が何よりだ」  状況がよく読み込めなかった。確かに、死刑執行と同時に何者かが看守らを襲撃したのは覚えている。とはいえ、それは日本での話だ。何かがおかしい。そんな疑念を抱いたままアジトへと戻った。  さっそく、俺はネットでニュースを見てみた。すると、2025年と出てきた。見出しは第三次世界大戦の記事ばかりだった。2020年の東京オリンピックのときに日本は核攻撃テロに見まわれ、自動的に米国が報復攻撃を行った。そして、米国とその同盟国に対しても自動的に核攻撃が行われ世界中の主要都市は壊滅的なダメージを受けていた。  さらに俺は自分の名前で検索してみた。すると、Internet Streamingで反戦運動を行っている扇動者のような自分がいた。こいつだ!間違いない。俺と入れ替わったのは間違いなくこのインチキ野郎だ。  そう確信して、どうしたものかと考えていると誰かが大声で叫ぶ声がした。 「おい!バンカーバスターが落とされるぞ!ここを撤収する!」  俺も逃げようとしたが、固定されたデスクの足にロープで繋がれていた。 「待ってくれ!このロープを外してくれよ!!」  なりふり構わず絶叫したが誰も相手にしてくれなかった。数分後、またチューブの中を移動していた。今度は何だ? 眩しい光が見えた瞬間、意識を失った。
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