第2章 賭博師のラブシュプリマシー

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「簡単なことです。一緒に入ればいいのです」 「は? それって犯人が?」  林原と一緒に低温室に入った人物。それは……。 「いやいや、俺じゃないって」  他でもない、颯太自身だ。周りからの疑いの視線に思わず颯太は両手を振って否定する。 「一緒に入ったのは凶器であるハチの方ですよ。坂井さんの持つビニール袋をよく見てください」  一同の視線は坂井の手元へ。 「袋の口は軽く折り畳む程度にして結んではいません。いわば、袋は密封されていないんです」  それでは危ない。いつハチが袋の口から逃げ出すか分かったものではない。 「あ……」  そのとき、颯太は思い出した。林原と街を歩いていた時、彼が何者かとぶつかったのを。そして、バッグを落とし、中身をぶちまけたのを。 「そう、それは危険な袋です。ハチがいつ逃げ出してもおかしくない。そんな危険な袋を林原さんにぶつかるなどして、気付かれないように林原さんの持ち物に忍ばせるんです」  坂井が舌打ちしたのが分かった。   「折り畳まれた袋の口は振動や、中でスズメバチが暴れたことによってだんだんと開いていきます。林原さんが見覚えのない袋を開けてしまうかもしれません。袋の口が開いたら最後、狭いところに閉じ込められ怒り狂ったスズメバチが攻撃してきます。いわば、天然の時限爆弾です」   「あっ、そういえば! 俺が前に刺されたときも確かこの通りを歩いていて、誰かにぶつかった!」 「そうだ……」   林原が声を上げ、颯太も同調する。  今、思い出した。パソコンで坂井のFacebookの写真を見たときに、彼をどこかで見たことがあると感じていた。それは、林原にぶつかってきた男だったのだ。あの時はキャップを目深に被っていたし、Facebookの写真とは違って黒髪だったから気付かなかったが、今思えばあれは確かに坂井だった。
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