第2章 賭博師のラブシュプリマシー

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――――  竜崎恵美、22歳。東央大学理学部数学科修士1年の女子生徒だ。  彼女はとても気立てが良く男女問わず誰からも人気で、いつでも皆の中心的役割を果たしていた。容姿も他とは一線を画しており、美人であったが、東央大学では珍しい金髪に濃いメイク、派手な格好と一見するとギャルであった。  だが、彼女には表と裏の顔のふたつが存在していた。  表の顔は、誰からも愛されるノリのいいギャル。  だが、彼女の裏の姿――真の姿は違った。彼女がギャルのような恰好をしているのはただの彼女が好きだからだ。性格が優しいのも元来のもので作っているわけではない。だが、それに釣られるように彼女の周りには人が集まる。東央大学だけに限らず東京中の大学に知り合いがいた。彼女は気立てが良く、そんな集まってきた人間を精一杯もてなしてしまう。さらに彼女の株は上がり、人気は増していく。彼女のFacebookアカウントを見ればそれは明らかだった。  しかし、彼女はそんな自分の境遇を欲していたわけではなかった。  誰もが羨むリア充生活。だが、彼女にとってそれはリア中に非(あら)ず。非リア中だった。  かつて愛里に彼女はこう零した。  リア充という言葉の使い方が間違っていると。一般的にリア充といえば、みんなで旅行に出かけたり、飲み会を開いたりというイメージだが、恵美に言わせれば、自分が満足すればいいのであって、たとえ数学の問題を独りで解くだけでもリア充になり得るのだと。  彼女は別に煌びやかな生活に憧れていたわけではなかった。平穏に、ただ数学と向き合っていればそれで良かったのだ。  ゆえに、愛里との静かな交友を恵美は楽しんでいた。心から。愛里は彼女の心を知り、たまに自分が恵美には不釣り合いなのではないかと思いつつも、それでも恵美と一緒の時間を楽しんだ。決まって彼女は愛里とふたりきりで会いたがった。誰にも邪魔されずに、ふたりきりの時間を過ごすために。
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