第1章

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ー アパートから学校までは15分程度歩いて行ける距離にある。駅もスーパーも少し遠いから自転車があれば便利なんだが、生憎親の車で荷物を運んだ貧乏引っ越しだったから俺の愛車を詰め込む余裕はなかった。こっちで買おうとしてたけれど、自転車屋が近くになくて諦めた。それに1年以上も歩いて通っていたら今更必要性も感じない。 住宅街独特の狭く曲がりくねった道を抜け、駅から学校までを真っ直ぐ繋ぐ大通りに出る。ここまでくれば同じ制服を着た学生で溢れかえっている。タイミングが悪いと歩道いっぱいに横並びする女子生徒の集団に捕まる。その集団の間に一人で入ってしまった時は本当に辛かった。今日は遅れ気味だからそんな心配もなく、いつもより快適に歩ける。 「待ってよー!」 腕時計を確認する。このペースだとギリギリになってしまうかもしれない、少しスピードを上げよう。なんならイヤホンもつけようかな。 そんな小さな努力も虚しく、ゴロゴロとした音が次第に大きくなってくる。あっという間にそいつは俺に追い付き、少し通りすぎてからペニースケートボードから降りた。そして俺の行く道を阻む。 「なんで置いていくのよ!」 不機嫌そうに睨まれる。 「俺が待ってと言ったらお前は待つのか?」 「待つわけないじゃない」 「じゃあ何の問題もないよな」 「問題あるわよ」 理不尽すぎる。思わず肩をすくめる。 何を言っても意味がなさそうだから横をすり抜け先を急ぐ。本当に遅刻しそうだ。 ぶつくさ文句が後ろから聞こえてくるが無視する。小走りで金川が追い付きふて腐れた顔で隣を歩く。リュックの肩紐の間に挟まれているペニーで先に行けばいいのに。 「前から気になってたんだがそこはスケボーじゃなくていいのか?」 ペニーはスケボーより小さく軽いので持ち運びがしやすい。最近ファッションの一部としても使われたりするとか。 「だって重いし可愛くないじゃない」 「そうですか」 君の憧れの人が聞いたら泣くぞ多分。 「シューマこそ、なんでスケボーに乗らないのよ?」 なんで俺まで乗らなきゃいけないんでしょうか。金川の『普通』の中に俺まで含めないでほしい。 「……乗るのは探偵だけで十分だろ?」 「よくわかってるじゃない!」 打って変わって嬉しそうだ、鼻歌まで始まった。探偵扱いすると機嫌が良くなり、大体納得するから便利。素直な子に生まれてきてくれて嬉しいよ。
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