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そしてもう1つ会社が急速に巨大化する事で直広が思った事がある。
『王が王の中の王で在り続ける為には王の意思を継ぐ新たなる王』を生み出さなければならないと…。
仕事のみに費やした数十年、正秋は会長、直広は社長へと就任しており、いつの間にか直広も年齢が40歳手前に来ていた。そんな中、直広は疲労や過労になる疲れで体が衰弱して倒れて、病院に入院するハメとなった。
そこで出会ったのが、当時35歳の若さで、誰もが羨む美しさを持ちながら看護婦長を勤めていた杉野 加代子である、2人はお互いを尊敬し合い、すぐに恋に落ちた。彼女と会話し、彼女と手を繋ぎ散歩する、そんな日常的な日々に直広は初めて安らぎを得たのだ。 そして2人はその年に結婚する事になった。
結婚後、3人の子供に恵まれた。長女の麗華、3つ年下に直広にとっては待望であった長男の正(ただし)、その2年後に次女の華蓮が誕生する。
長女の麗華はまるで幼き日の直広そのものであった。幼稚園から勉学に励み、小学生に上がると、どの教科も満点を取る事でトップの座に居続けた。
そんな麗華に直広は、昔の自分を重ねるかの様に共感し、習い事を勧めてみる事にした。
「麗華、他に学びたいものは無いか」
「…空手‥」
直広は麗華のその言葉に衝撃を受けた。普通の女の子ならピアノやダンスを好む筈だと思っていたからだ。何故かと直広は麗華に問いただしてみた。
「何故空手何だ?」
「男なんかに負けたく無いから」
鋭い目付きでそう言い放った麗華に、直広は心の奥底から満面の笑顔を見せた。
「(この子は強くなる‥、私同様勝利しか望んでいない‥)」
間違い無く麗華は自分の血を濃く受け継いでいる。そう信じた直広は想像以上に麗華へ期待を寄せた。そしていずれ成長する、唯一の長男である正にもだ。
だが、正の異変に直広が気付いたのは彼が小学生に上がった頃だった。
元から口数も少なく無表情だったのは、まだ幼くて、知恵が発達してい無い性格から来るものだと直広や母の加代子は思っていたからだ。
しかし、正の言動、行動は明らかに普通の子供としては可笑しかった。
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