2 織る黄葉(もみぢば)に…

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「ナル。女子の皆さんの邪魔しちゃ悪いから、ここはおとなしく帰ろうぜ」 「けどっ……」 「いーから、いーから。じゃあ、またな。比奈瀬」 「はーい、仲良く帰るのよー」 天城に無理やり背中を押されて、教室を出る瞬間。 「どうせなら、昔みたいに『なるちゃん』『ゆうちゃん』って呼び合っちゃいなさーい」 という声が聞こえてきたが、きっと空耳だろう。 「……あ? おい、帰らないのか?」 もう諦めて、一緒に帰るつもりでいたのに。昇降口とは逆の方向に天城が向かっているものだから、我慢できずに尋ねた。 「ナルぅ。俺さぁ、いいコト思いついちゃったんだよねー」 おい、嫌な予感しかしない笑顔を俺に向けるな。 「一緒に登下校するだけじゃなくて、もっとナルと親密になれるナイスアイディアが浮かんだんだよー」 そんなアイディア、要らんわ。さて、音楽でも聴くか。 「あーっ、スルーすんなって。なぁ、聞いてくれよぅ」 腕を掴んでブルブル揺らすな。音楽データは繊細なんだぞ。 「何だ、言ってみろ」 「写真部のナルさん! 俺の写真を撮ってくれ!」 聞くんじゃなかった。 「俺は、人間は撮らない」 「そんなこと言わずにさっ……ん? あぁっ!」 「な、何だ? おい。離せよっ」 急に大声を出したかと思ったら、両肩まで掴んできやがって。何なんだ。 「ナルっ。俺のこと、『人間』だと思ってくれてたのか?」 は? 「俺。今までナルに、けちょんけちょんにぶった斬られてきたからさ。てっきり道端のダンゴ虫くらいにしか思われてないと思ってて。でも、いま人間扱いしてくれたー」 アホか。 仕方ない。眼前で眉を下げてる天城を慰めてやるべく、重々しく言い放つ。 「お前は、ダンゴ虫じゃない」 「……っ。ナルっ、嬉し……」 「お前は、ナメクジ以下だ」 「ひどっ! そんな喩えに使ったことを、ナメクジに謝れ!」 そっちかよ!
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