2 織る黄葉(もみぢば)に…

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「あれ? 何の話をしてたっけ?」 「お前の身体に、塩をかける話だ」 「あ、そうそう。粗塩は角質取るのに最適……って、違ーう! ナメクジ違ーう! 写真! 写真の話だよっ」 チッ、気づいたか。 「何度も言わせるな。俺は、空と海にしか魅力を感じない」 「ナルの撮る星の写真は、俺も好きだけどさー。でも、海なら共通点があると思うんだよね」 「あ?」 共通点? 「ナル。俺の部活してる姿を見にきてくれよ。んで、写真撮ってくれ!」 「あぁ!?」 「名付けて、『水着撮影で更に親密・ラブラブ大作戦』!」 「……その口。気持ち悪い台詞が吐けないように、ピッタリと縫いつけてやろうか?」 「どうせなら、ピッタリと口で塞いでほし……グホッ!」 縫いつけるよりも、塞ぐほうがいいんだろう? お前の好きなカレーパンだ、喜べ。 「嬉しいか? 好物で塞いでやったぞ」 「……ぶはっ! ひでぇな。せめて袋から出してから突っ込んでくれよ。てか、何で持ってんの? カレーパン」 「俺は、そこまで親切じゃないし、それは昼飯の残りだ」 「まーた、悪ぶっちゃってー。ナルが優しいってこと、俺、ちゃーんと知ってるしぃ」 「な、何言って……むぐっ」 「少食は駄目だよー。ほら、半分食べて?」と、カレーパンが口に突っ込まれた。 「何だかんだ言っても、クラスのためにカグヤ役やってるもんな」 ハメられただけだと抗議したいが、カレーパンを旨そうに頬張る顔を見て、やめた。俺も、咀嚼中だしな。 「んで。比奈瀬の言う通りに、俺とも帰ってくれるんならさ。このアイディアにも乗ってくれるって、信じてるんだよ」 「……」 「ナル? 怒った?」 「はあぁ……わかった」 「え、ほんと? 撮ってくれるのか?」 「撮るとは言ってない。取りあえず、見学だけだ」 「ヤリッ! よし、すぐ行こうぜっ」 撮るとは、言ってないのに。まるで俺の了解が得られたみたいに、飛び上がって喜んでる。 馬鹿だな、コイツ。 ほんと、どこまでも馬鹿だ。
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