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はっ、そうか。そうだった!
今の今まで、すっかり忘れてたが。この比奈瀬、あの文芸部の部長じゃないか!
薄い本の収益で、とんでもなく潤ってるという、あの悪名高い文芸部。
確か、コイツの妹も中等科の文芸部長を務めていて。姉妹の合作の総売上は、他の部の年間の部費に相当するとか。
多分に、やっかみを含んだ噂にすぎないとは思うが。
人気のある在校生を登場人物にして販売部数を伸ばしてるという、良からぬ噂もあるにはある。
それでも、その薄い本を手に取ったことがない女子生徒は皆無と言われるほど、女子たちに支持されてる部らしい。
あー、今更な心配だが。その薄い本、中等科にいる弟の目には触れてないだろうか?
たぶん大丈夫だとは思うが、正親は可愛い物が大好きな性分だからな。
案外、女子に混ざって毒されてるかもしれない。男同士のアレな描写を読んで、キャーキャー言ってたりするかもしれない。
心配だ。今夜あたり、探りを入れてみようか。
「――くん! 秋田くん! 聞いてくれてる?」
「え? あぁ、ごめん。別のこと考えてて……あ、いや。衝撃が強すぎて、その……」
正親の顔を思い浮かべていた意識に、比奈瀬の鋭い声が入り込んできた。
つまり、ぼうっとしてたわけだが、衝撃にヤラレてたのも本当だ。
男同士のラブストーリー劇に出演しろって言われて、「はい、わかりました」なんて快諾できるわけがない。
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