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店長のお仕事
「こんな仕事出来ません!」
フロアに叫び声が響いた。
さっきまでキャハっと笑っていた紫乃さんの顔がひきつる。
「うるさいなー山下は。大丈夫だって。依頼が来たら山下にも良い役をあげるから、今日のところは我慢してくれ。」
相変わらず整った顔立ちに今日は細い黒ぶちメガネをかけている。
店長が試着室と呼ばれる部屋から出てきた時はヤバイ惚れた。と思った。
私は高級レストランを思わせる白いワイシャツにベストという出で立ち。
タグを見るとブランドに疎い私でも知っている高級ブランドのロゴが入っていた。
紫乃さんが施してくれたメイクは清楚で大人っぽい雰囲気だった。
1週間前までアルバイト生活をしていた私にとっては夢のような仕事だと思った。
仕事の内容を聞くまでは…
「今日は別れることを承諾してくれない彼氏を説得してほしい。との依頼です。別れる原因は依頼主に他に好きな人が出来たからという単純な理由ですが、浮気相手には彼氏がいると言っていない為、代役を立てたいとの事でした。」
ん?
「彼氏側には浮気がバレておりその男に会うまでは別れない。と言われているとのことです。面倒な彼氏のようで、友達も1名連れてくると情報が入っています。」
んん?
「俺はその浮気相手役をやりますが、今回はサポートの必要が無いので紫乃さんはホール。山下と楓は厨房で業務をお願いします。」
「あ、あの~何の話でしょうか?」
「あ。ごめん山下。厨房の事は楓に聞いてもらえるか?俺料理については全然ダメなんだよな」
いやいや。レストランの店長が料理については全然ダメってどうゆう事ですか?と思ったが
「そうじゃなくて、依頼人とか俺が浮気相手役をやるとか…」
「なんだそっちのことか。俺たちの仕事は依頼された役になりきって、この店の中で依頼人の目的を達成させることだ。
場合によっては山下にも役になりきってもらうから、俺の仕事ちゃんと見てろよ~」
どうゆうこと?私は料理人として雇われたんじゃないの?
「話が違います!」
「派遣スタッフの話はしたはずだぞ。」
確かに派遣スタッフについては聞いたが、こんなことをするなんて聞いていない。
私は思わず大声を上げた。
服を着替える為に試着室と呼ばれる部屋に向かうと店長が私の腕を掴み
「大丈夫だ。お前なら絶対に出来る。」
そう強く言った。
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