店長のお仕事

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「お疲れ様でしたー!」 ワイングラスが4つ重なり音をたてた。 「それにしてもよくわかったよね~!ナイス!ゆうりりん」 ーゆう…りりん? 紫乃さんのネーミングセンスは恐ろしいほどダサいようだ。 「そんなことないです。一つ一つは小さな疑問だったんです。 あんなに完璧な格好なのにどうしてペタンコ靴なの?とか、メニューには無いのにルイボスティがあるか確認するってことはよっぽど好きなんだな。とか…」 あの時感じた違和感を思い出した。 「ん?って思ったのはやっぱり急に具合が悪くなった時ですね。もしかしてつわり?って… 後はバッグの持ち手の付け根に擦れた跡があったから。」 「擦れた跡?」 紫乃さんが首をかしげる。 「はい。普通ブランドのバッグにキーホルダーなんて付けませんよね。もし付けてたとしても何で今日は付いていないのか…」 「落としたんじゃないの?」 「それも考えましたが今までの疑問と合わせて考えると、故意に外したとしか考えられないんです。」 「どうゆうこと?」 「マタニティーマークです。」 マタニティーマークは声に出すことなく周りの人に妊婦であることを伝える為のキーホルダーのようなものだ。 妊娠により専門学校を退学した友達が最終日にバッグに付けて自慢げに振り回していたことを思い出した。 「杉下にバレるとややこしくなると思った美奈子さんはそれを隠したんだと思います。 で、薬いりますか?ってカマかけたら慌てて拒否したから確信したって感じかな。」 「あぁ。妊婦さんは安易に市販の薬は飲めないもんね。」 やっぱりすご~い!と紫乃さんは言った。 「そんなことよりどうして鈴木が浮気相手だってわかったんだ?」 店長が前に乗り出して聞く。 「あぁ。まずはレストランではタバコはマナー違反だと知っているにも関わらず、食事の場では相応しくないトイレという単語を使いました。 恐らく杉下が美奈子の前でタバコを吸うとわかっていたから、調べたんだと思います。」 「次に美奈子の具合が悪くなった時に症状も聞かずトイレへ行くことを勧めました。きっとつわりの症状であることを知っていたんですね。」 「でもそれだけじゃ確証は無いままじゃないか?」 「え?私この件に関して確証があったと一度でも言いましたか?」 そう言って今までの仕返しにと店長を見つめニヤっとした。
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