店長のお仕事

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依頼人は【猪狩 美奈子 28歳】 依頼内容は先ほど店長に聞いている。 それにしても彼氏が別れてくれないなんてよっぽど愛されてるんだな。 急いでカウンターにあるヘッドセットを装着した。 予約席にはマイクが仕掛けてあり会話を聞くことが出来る。 店長は小さなイヤフォンを着けているようで「何か気付いたことがあったら言ってくれ」と言っていた。 『心配しなくても大丈夫です。安心してお任せください』 マイクを通して聞く店長の声はいつもより優しく、大人の男性の声だった。 そんな話し方出来るの?と耳を疑いつつも、心地の良い声に少しだけうっとりとした。 紫乃さんがオーダーのコーヒーとルイボスティを持っていく。 店長の隣に座る女性は依頼内容を聞いたときに写真を見たが、実物は比べものにならないほど美人だった。 あの顔だけイケメン店長の隣に座っていても何の違和感もない。 「美男美女だなぁ」 思わず声を漏らした。 その瞬間マイクから店長の咳払いが聞こえ、余計な事を言ってしまった。と口元を押さえる。 美奈子はこれから迎える決戦に緊張しているのか、ハンカチを握りしめている。 花柄のワンピースに淡い色のカーディガンを羽織り、ブランドもののバッグを持っている…スラッとした体型も相まって雑誌から出てきたようだった。 あれ?あんなに素敵な格好なのに何であんな靴を履いているんだろう? なんとなく違和感を感じたが今の流行りなのかな?と特に気には止めなかった。 その時店の扉が開いた。 入ってきたのは20代前半の男2人だった。 紫乃さんが慌てて接客にあたる。少し話をしてから予約席へと通された。 彼氏は【杉下 学 25歳】 その友達は【鈴木 大地 24歳】 『はじめまして。杉下です。こっちは鈴木と言います』 あれ?思ったより冷静だ。 『はじめまして。須崎 大介と申します。』 店長が深々とお辞儀をした。 「みんな名前が【す】から始まってるね」 紫乃さんに面白いものを見付けたように話しかける。 「何でも須崎大介は依頼人からの指定らしいよ~名前はバレちゃってるってことだろうね~」 紫乃はそう言ってオーダーをとりにいく。 メニューを見て男性2人が固まる。 それはそうだろう。一番安いコーヒーでも1800円もするんだから。
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