第1章

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 ──しっかり聞こえてるってんだよ  朝が弱い仁は、 ニューヨークのホテル住まいをしていたころから、 アズより先に起きたことがない。 たまに朝からふらりと廊下に出ては、 煙草をふかしながら一階の自販機まで行くことがある。 マンションの一階のエントランスで寛ぐ忍に会うことがあるからだ。  どっしりとしたプレジデントチェアのあるエントランスは新聞を読む者や、 自販機のコーヒーを飲む者、 取引先と約束をして待ち合わせしている者までいて、 サラリーマンが多くを締める。 忍は煙草を吸わないが、 時々、 作務衣のまま降りてきていた。
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