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「私立鳩朔学園にまつわる言い伝えその47だぜ」
ゴウが左手の親指以外の四本と右手の人指し指と中指を立てて言った。
それじゃ42だというツッコミは面倒なので誰もしない。
僕たちは生徒用の昇降口に差し掛かっていた。
夜の靴脱ぎ場はガランとしていて不気味だ。
玄関ガラスを通して月の光かりが射し込んではいるが、それと非常灯の緑の光だけではとても明るいとは言い難い。
下駄箱の陰に何か潜んでいるんじゃないかとついつい妄想してしまう。
「普通は7つとかじゃねーの?」
眼鏡のブリッジをクイッと押し上げながら、ハジメが胡散臭そうに言う。
彼は元々この学校侵入計画には反対していたのだ。
「歴史ある学園だぜ。創立108年だぜ。煩悩と同じで不思議エピソードもどんどん増えていってるんだぜ」
「で、なんなんだい、その47番目の言い伝えってのは?」
イサオが先を促す。
どちらかというと彼は今夜の探検には乗り気だ。
「ハロウィンの夜に、図書室の一番奥の壁に扉が現れるんだぜ」
ゴウは目をキラキラさせて拳を握る。
高校生にもなってばかばかしいとか思わないのかな。
だけど、どうせそんなところだろうと分かってて、ノコノコ集まったみんなも似たようなものだ。
どこかで少し、そういう日常から離れたファンタジーが実際にあるんじゃないかと期待しているのだ。
「へー」
冷淡なフリをしているハジメにしてもきっとそうなのだろう。
縁なし眼鏡の奥の目が少し笑っているのがその証拠。
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