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部屋に戻れば…
最愛の恋人がうさ耳を付けて待っていた。
ご丁寧にもお尻には…可愛くて丸いフサフサした尻尾まである。
しなやかな白い腕が自分の首に甘く絡みつく。
小さな赤い唇を、さらに赤い舌でペロリと舐めて艶やかに光る。
「お帰りなさい…剣。」
「……今日は、ウサギか…。」
赤い唇が婉然と微笑む。
そうして、吐息を吹き込むようにその耳に囁く。
「はい…今日はウサギさんです。…剣…今日は満足させて下さいね。」
「……。」
学園では…純真無垢、清純派…穢れない茶道部長…。
そう、それは…真実恋人の姿であり…
目の前の色香を振りまく妖艶なウサギも…また恋人の真実の姿。
魔法の様に、印象を変えてしまう恋人に毎日ドキドキしている剣青年には…
ファンタジーな日常など、恋人との時間だけで十分だったりするのである。
「…眠れなくても良いのか?」
その答えは…恋人の甘い唇…。
その甘さに酔いしれながら、剣青年は思うのだ。
将来の希望は国家公務員しかないと。
せめて…職場だけはリアリズムを求めたい。
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