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人と人との繋がりを図にしてみると、まるで木の枝が無限に伸びているような図が出来上がる。
この図が、俗に《樹系図》と呼ばれるものだ。
そんな樹系図が家族以外に殆ど広がることのない少年が一人。
根は優しくて力持ち、困った時には駆けつけて、誰もが憧れるスーパーマン。
そんな強い男になることを夢見ていた少年は呟く。
「なんか良いことないかなぁ。」
無駄に大きな自分の部屋。ベッドの上から窓の外を見つめ、ぼそりと。
その声は、全てを諦めているかのようで。
同時刻、そのすぐ近くの場所で、少女が一人。
豪華なお屋敷に住んで、フランス人形のように可憐でお淑やか、白雪姫やシンデレラ以上に幸せな物語のお姫様。
そんな夢を心の奥底に閉じ込めた少女が呟く。
「特売特売!近道……こっち!とうっ!」
その声は、元気に満ち溢れて。
どこの誰かも知らない豪華な屋敷の柵を飛び越え、特売への近道を急ぐ少女の目と、窓からこちらを見つめる少年の目が合う。
少女は足を止める。
一瞬停止する少年と少女の時間。
「こっ、こんにちは!」
「あ、え?はい。こんにちは。えと……君は誰?」
少女の挨拶、少年の質問。
その時、家族以外に広がることの無かった、これからも広がる予定の無いはずだった少年の樹系図の枝が伸びる音が聞こえた。
夢を諦めざるを得なかった二人の少年少女。
お互いの樹系図が、繋がる。
「私は━━━。君は?」
「僕の名前は━━━」
それが、全ての始まりだった。
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