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今から十二年程前、俺が中三になったばかりの頃だった。我が家から百メートル程しか離れていない空地へと、突然重機が運び込まれ出したのだ。
その後、「新築が建てられて新しい家族がやって来るらしい」と母から聞いた。
数か月後に完成した家は、一面真っ白で大きな窓がいくつもあり、日差しがめいっぱい入る構造だった。美しい洋風な作りで、平凡な日本家屋である自分の家とを比較して、勝手にへそを曲げたりしたものだ。
ここへ引っ越して来たのが、父親が有名企業の重役を務めている裕福な家族だった。彼の爽やかな外見とアルマーニのスーツは、自然と人目を誘う。母親は、シャネルやグッチといった高級ブランドの洋服をぴしりと着こなし、首元や腕には常に高そうなアクセサリーを身に付けて正にセレブ然とした女性だった。
この両親には一人息子がいた。それが、和哉だった。
彼は俺と同年な上、偶々同じクラスへと転校して来たので直ぐに仲良くなった。和哉は色素が薄い儚げな印象の男だった。その為、即座に一部の女子たちからの人気を獲得したのだ。
共に下校しては家へと上がらせてもらい、よく一緒に遊んだものだ。
そして、いつからかそこは、地元の人間たちの間で「白い館」と呼ばれるようになった。
それ程に気品のある家だったのだ。
そんな何不自由ない家庭の父親の趣味は、絵画収集だった。
例え、オークションで想像以上の高値が付いてしまったとしても、「狙った獲物は逃がさない」という熱の入れようで、その総額は相当なものだったようだ。
その後、俺たちが高校へ進学しても和哉との仲は相変わらずだった。
だが、地元の平凡な普通科高校に行った俺とは違い、裕福で成績優秀な彼は、当然の如く有名私立高校へと進学した。
それからだろう。和哉との間で、微妙なズレが生じ始めてしまったのは――……
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