嘘吐男子という人間

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その日、学年で一斉に英語の抜き打ちテストがあった。 この学校は学力順でクラスが別れており、わたしのいるA組が1番成績の良いクラスで、次がB組、その次がC組……となっている。 そして、テスト問題はクラスによって違う。 昼休み前に採点された答案用紙が返ってきたけれど、結果は良くも 悪くもなかった。 それを鞄に仕舞うと、お弁当を取り出し黙々と食べる。別に一緒に食べる友達がいない訳ではないけれど、わたしが何かに熱中するとそれしか見えない事を知る友人たちは、その期間、わたしを放っておいてくれる。 それに、今回のわたしのターゲットは学年でも有名な双月くん。 わたしが彼の嘘を暴くというのは、友人たちにとっても面白いものらしい。 お弁当を食べ終わり、B組へと向かうと、双月くんたちはまだ昼食の最中だった。 「園崎、飯食うの早ぇよ。ちゃんと食ってんのか?」 「食事中って、警戒心が薄れるものよ。チャンスは逃さない主義なの」 そう言って双月くんを見ると、彼は顔を背けて笑っている。 その手元には、彩り鮮やかなお弁当が半分ほど減っていた。 対象的に、尾上の手元には、サンドイッチやおにぎりが散乱している。 「双月くんは、いつもお弁当ね」 「基本的にはね。でも、時々はコンビニで買って食べる事もあるよ」 「怜の弁当って、前日の飯の残りとかじゃねぇから、すっげー羨ましい。俺の弁当、昨日の残りのコロッケだったし」 「弁当って……それ、コンビニで買った物じゃない」 「大輝は2限目終わった後に弁当食べてたから」 その時間にお弁当を食べて、今、サンドイッチやおにぎりを食べてるの? 男と女では食欲が違うのかもしれないけれど、考えただけで胸焼けがしてきた。 「双月くんのお母さんは、料理好きなの? いつも美味しそうなお弁当よね」 「いや、これは家政婦さんが作ってくれるんだよ。母さんは料理なんてほとんど作らない。そういう園崎のお母さんは?」 「……わたしは、自分で作るもの」 「え、園崎、料理作れんの!? 今度俺たちにも弁当作って来てくれよ!」 「どうして?」 「いいじゃん、食ってみたい!」 「面倒くさいわ……。双月くんも、何か言ってやって」
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