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「典型的なヤンチャ坊主ね」
「ああ見えて、色々思慮深い所もあるんだけどね」
とてもそうは思えないけど、人を見かけで判断するのは間違いだというのは良く知ってる。
それにしても、毎回尾上が呼び出されるたびに、双月くんは先に帰らず、こうやって彼が戻って来るまで待っているのだから、律儀なものだ。
そんな事を考えていると、数人の女子がコソコソと話をしながら近づいて来た。
そして、その中の1人が代表する形で双月くんに話しかける。
「ねぇねぇ、双月くん。聞きたい事があるんだけど、ちょっといいかな?」
「ん? 何かな?」
双月くんは穏やかな笑みを浮かべて彼女に言葉を返す。
その子は、私の方をチラチラと見ながら、言葉を発した。
「あのさ、この子が2年に上がってすぐに双月くんに告白されたって言ってるんだけど、本当なの?」
そう言って押し出されたのは、小柄なショートカットの可愛らしい女の子だった。
すぐに双月くんに視線を移すが、特に動揺している様子はない。
そして、彼は困ったような表情をした。
「えっと……何の話?」
その瞬間、視界の端で少女が青ざめるのを捉えた。
しかし、他の子たちがその子に視線を向ける直前、双月くんは笑いながら言葉を発した。
「ごめん、意地悪だったね。……嘘だよ」
その言葉に、彼女たちは反らしかけた視線を双月くんに戻す。見事なタイミングだ、と思った。
「まさか、こんな形で暴露されるなんて思ってなかったからね。ちょっとした意趣返しだよ。……それで? 俺が彼女に告白したんなら何?」
「え、いや……その、私たちが仲を取り持ってあげようかなって」
「そっか、ありがとう。でも、大丈夫だよ。今はほら……」
そう言って双月くんがわたしを指差すと、彼女たちは納得したように頷いた。
「そうだよね。園崎さんも、ごめんね」
「え?」
「じゃあ私たち、もう行くから」
訳も分からず眉をしかめてると、彼女たちはわいわい話しながら教室を後にした。
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