嘘吐男子という人間

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それを見送った後、双月くんに向き直る。 「何なの?」 「知らないの? 俺たちが付き合ってるって噂になってるの」 「は!?」 そんな事全然聞いてない! でも、そういえば友達に双月くんの所へ行くって言うとニヤニヤした顔で見送られるようになったような。 「本当に知らなかったのか。意外だな。探偵少女が聞いて呆れるよ」 「そんな根も葉もない噂、どこから……!」 「そりゃ、これだけピッタリ監視されてれば勘違いする奴だって出てくるよ」 「ちゃんと否定しなきゃ……」 「頑張って」 彼も当事者なのに、まるで他人事のようだ。 「誤解されたままで、双月くんは困らないの?」 「別に。そう思わせとくのも、それはそれで楽しいかな」 何ていう自分勝手! まともに相手にするのも疲れる。深呼吸して、気を落ち着かせた。 とりあえず、友達から地道に誤解を解いていこう。 「それより、なぜ嘘をついたの?」 「何が?」 「あの子に告白したって、嘘でしょう?」 「やっぱり園崎には分かるか」 「明白じゃない」 「だって、ああ言わないと彼女、困るだろ」 「そうだとしても、嘘は嘘だと指摘してあげるのが本人のためよ」 そう言うと、彼は苦笑しながら肩を竦めた。 「人が嘘を吐く時って、ほとんどの場合が必要だから嘘を吐くんだよ」 「例えば?」 「彼女の場合は……そうだな。多分、友人関係のより良い持続……じゃないかな?」 「友人関係の持続って、友達の事を騙してるじゃない」 「……園崎はさ、友達と対等?」 「そりゃ、そうに決まってるじゃない」 「そうか。でも、残念ながら対等じゃない友人関係っていうのも存在するんだよ。彼女とは1年の時に同じクラスだったけど、友人グループの中でも発言権が低いように見えた。面白い話題を出して、友人たちを楽しませたいとでも思ったんだろ」 「そんな……」 「俺は嘘吐きで有名だし、上手く乗ってくれると期待したんだろうな」
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