嘘吐男子という人間

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だから気にするなよ、と言って尾上は教室から出て行った。 わたしは拳を握りしめて、大きく息を吐く。 油断していた。双月くんは成績優秀。その直感を信じるべきだったのだ。 「また、わたしの負けね……」 尾上は難易度の高い嘘だと言ったけれど、多分、双月くんの中でこれは『バレてもいい嘘』に違いない。 そんな物も見抜けないのに、彼の『絶対にバレてはいけない嘘』なんて暴けるのだろうか。 頭を振って、弱気になる心を奮い立たせる。 わたしは絶対に彼の嘘を暴く。そのくらい出来なくては、わたしの欲しい情報はきっと手に入らない。 そう、わたしは『あの人』と同じくらい観察眼を磨かなければならないのだから。 そして、その時こそ、わたしはわたしの知りたい真実を掴む事ができるはずだ。 黄昏に染まる校舎の中で、わたしは決意を新たにする。 「ゲームは、まだこれからよ」
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