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双月くんはやれやれと言わんばかりに溜息を吐いた。
そして、真剣な眼差しで言葉を放つ。
「神に誓って、俺は勧誘されてない」
「貴方の信仰する神って嘘くさいわ」
「あのな……。分かった、そこまで言うなら、俺の最大の嘘に誓う。俺は『Liar』から勧誘された事はない」
そこまで言われると、彼の言葉は嘘ではないのだと実感する。
という事は。
「じゃあ、『Liar』って組織がいい加減な物なのね」
勧誘メンバーは適当に選んでいるのだろう。
そうでなくては、現状の説明が出来ない。
「いや、『Liar』っていうのは、かなりしっかりした組織だと思うよ。ネットで話題になってるけど、特別なサイトが作ってあって、会員しか入れないらしい」
「そういえば、溝口くんの見せてくれたカードにQRコードが付いていたわ」
「メンバーはそこからログインして、特設サイトに入れるって聞いたよ」
「誰かにカードを盗まれたりしたら?」
「さぁ? それは知らないな。俺に聞くより、溝口くんに聞いた方が早いと思うけど」
「そうね……」
そう言って少し思考する。昼休みに溝口という男子に話を聞きに行くか……。
しかし、双月くんから目を離しても大丈夫な物なのだろうか。
もしかしたら、この現状自体が双月くんの仕掛けた罠である可能性もないわけじゃないのに。
特に前回、自分の直感を信じなかった事でまんまと双月くんに騙されてしまっているのだ。
「いえ……いいわ。こんな訳の分からない組織を探るなんていつでも出来るもの。わたしはいつも通り行動する」
「……それでいいの?」
「ええ」
それがわたしの出した結論だった。
すると、双月くんは残念そうに肩を竦める。
「残念。久々に解放されて思いっきり嘘が吐けると思ったのに」
「それが本音な訳ね。残念だけれど、まだまだ監視させてもらうわ」
そう伝えて、わたしは自分の教室へと戻った。
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