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クラスに戻ると、友達に溝口なる人物の事を尋ねてみた。
「溝口? ああ、あの嘘吐き野郎ね」
「本当に信じられないくらい低レベルな嘘吐くよね」
それが友達の溝口くんに対する評価だった。
「マミ、双月くんだけじゃ飽きたらず、溝口の嘘まで暴くの?」
「ってゆーか、暴くまでもなくない? あいつの嘘、分かりやすいもん」
「そういう訳じゃないの。ちょっと今朝、話しかけられたものだから……」
「え、なになに。もしかして告られたとか!?」
「違うわよ」
否定するものの、2人のテンションは上がっていき、きゃあきゃあ騒ぎ立てている。そして終いには。
「でもマミには双月くんがいるもんね!」
「だから、双月くんとは何でもないって何度も言ってるじゃない」
「でも、B組の子が双月くんに確認したら肯定したって言ってたよ!」
「それは彼のお得意の嘘よ」
「だけど、この前の土曜日デートしたんでしょ? 双月くん行き付けのカフェに連れてったらマミが気に入ってくれたって双月くんから聞いたよ~」
「行ってない!」
何を淡々と有りもしない嘘を吐いているんだ、彼は。
土曜日は叔父夫婦の所に遊びに行っていたから、この街にはいなかったし。
「えー、嘘なの? だって凄くリアリティあったよ。マミが紅茶好きな事知ってたし、シフォンケーキと苺タルト半分ずつしたって」
「嘘よ、嘘!」
「マミがそんなに否定するなら、そうなんだろうけど、全然嘘には聞こえなかったよ」
まさか、わたしの友達にまで嘘を吹き込んで信じさせているなんて考えもしてなかった。
これだから、彼から安易に目を離す事が出来ないのだ。
自分の席に戻り、わたしは大きく溜息を吐いた。
午前中の授業が終わり、そそくさとB組に行くと、そこには尾上が1人で退屈そうにお弁当を食べていた。
「双月くんは?」
「よう。怜なら溝口に『Liar』のカード見せてもらうっつってC組に行ったぜ」
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