プロローグ

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「完璧な演技力とポーカーフェイス。流石ね」 「俺の事を知ってるのか?」 「もちろん。少なくとも、この学年でアナタを知らない生徒は居ないんじゃない? どんな相手でも華麗に欺く『嘘吐男子』の双月 怜(そうつき れい)くん」 そう、彼は嘘の天才。 『ウソツキ』というのは、本来は人に嫌われる。 でも彼は違う。 いつも沢山の友人に囲まれていて、みんなが彼の嘘に魅了される。 そんな彼だからこそ、わたしは彼の嘘を暴きたい。 その、完璧なポーカーフェイスを崩して、本当の『双月 怜』の素顔を見てみたい。 「ねぇ、どうしてアナタは嘘を吐くの?」 「愚問だね。嘘は一種の芸術だよ。真実より優しくて、魅力的で、夢がある。キミこそ、どうしてそんなに真実に拘るんだ?」 「愚問だわ。真実は確かに残酷な時もある。でも、嘘のように汚くて醜くて無意味ではないわ」 「でも、人間は嘘を吐く生き物だ。『私は嘘を吐いた事がない』が最大の嘘である……って説を知ってる?」 「知っているわ。じゃあ、アナタは『嘘吐きは泥棒の始まり』って言葉を知ってる? 嘘は犯罪への第1歩なのよ」 わたしも彼も、口を閉ざし、互いを見つめたまま動かない。 きっと同じ事を考えている。 この主張だけは譲れない、と。 「話は平行線みたいね」 「ああ、残念だ」 「ウソツキ」 わたしの言葉に、彼が笑う。 まるで嘘を暴かれた事を喜ぶように。 「嘘を見抜かれて、悔しくはないの?」 「悔しい? まさか。あの程度の嘘、むしろ見抜いてもらわなきゃ困るよ。見抜かれるために吐いた嘘を信じられる事ほど、つまらない事はない」 「そう……。アナタの嘘には種類があるのね」 「ご名答。流石は『探偵少女』」 不敵に微笑む彼の顔に、焦りの色は微塵も感じられない。 普段、友人たちに見せるような柔らかな眼差しはそこにはない。 あるのは、相手を値踏みするような目。
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