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彼を試すために近づいたのに、いつの間にか彼のペースに呑まれてる。
試されているのは、わたしの方みたいね。
「わたしは、アナタの嘘を見抜く。そして、アナタの中にある真実を見つけてみせるわ」
「へぇ……それは楽しみだ」
そう言って彼は、教室の扉へと視線を向けた。
それを見計らっていたかのように、扉が開く。
「お待たせ。悪いな、怜。先生の話が長くってよ……」
頭をボリボリ掻き、欠伸をしながら彼の親友と噂される男子生徒が入ってきた。
そして、わたしの姿を見て動きを止める。
「うわ……俺、もしかして邪魔した?」
「馬鹿言うなよ。俺が1人で残ってたから、園崎さんが話し相手になってくれてたんだ」
彼は、まるで何事もなかったかのように、穏やかな笑みを浮かべる。
先ほどの緊迫感が嘘のようだ。
もしかしたら、いつの間にかわたしも、彼の創り出した空間に惹き込まれていたのかもしれない。
そう考えると最初の勝負は彼の勝ちだ。
「じゃあ園崎さん。今日は楽しかったよ」
「ええ。わたしも楽しかったわ」
「……なんか、怜と園崎が会話してると、嘘と真実が入り混じって異空間に迷い込んだ気分になるぜ」
牽制し合うようなわたしたちの空気 に気づいたのか、彼の親友は大きく溜息を吐いて頭を抱えた。
そして、自分の鞄を手に取ると、教室の扉へと向かいながら声を上げた。
「じゃあな、園崎! 気をつけて帰れよ!」
「ええ、さよなら」
彼も、親友の後に続いて外へ向かうーーと思いきや、途中で振り返り、言葉を残す。
「そうだ。さっきの話の続きだけど。キミにヒントをあげよう。俺は大きく分けて3種類の嘘を吐く。『嘘だと見抜かせるための嘘』と『嘘だとバレても構わない嘘』、そして『絶対にバレてはいけない嘘』だ。キミには、ぜひとも俺の最大の嘘を見破ってくれる事を期待してるよ」
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