嘘吐男子という人間

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「知らないって……貴方何のために双月くんの幼馴染み兼親友をやってるの?」 「少なくともお前に情報を提供するためではねぇよ」 彼は面倒くさいという表情を隠しもせずに答えた。 まぁ、それはそうだろうけれど。 「何かあったはずだわ。嘘を吐き始めるキッカケになった何かが……」 「あのさぁ、園崎。何でお前そんなに怜に執着すんの? 本人が隠しておきたい何かを暴露する必要なんかねぇだろ?」 「それは……」 「え、もしかして、秘密を暴くってのは建前で、実はラブでロマンスな感じなのか? だったら協力するぜ!」 「今のところ、そういう感情は1ミクロンもないわね」 「つまんねー」 尾上は机に突っ伏して、大きく溜息を吐いた。 何もそんなにやる気を無くさなくても。 「わたしが双月くんに興味を持ったのは、彼が嘘の天才だって聞いたからよ」 「へぇー」 「今はそれ以上でもそれ以下でもないわ。余計な感情を挟んでいたら、真実に辿り着けないもの」 「……って事は、お前らの勝負に決着が着いたら、恋愛に発展する可能性があるって事か?」 「だから、それは分からないわ」 「ふーん」 少しは興味を惹かれたのか、先ほどよりかは協力的な態度を示してくる。 双月くんと正反対で、何て分かりやすい人なのかしら。 「俺はさ、怜と園崎、案外合うんじゃねぇかなって思うんだよな」 「……どうして?」 「人間って、自分にない部分を補いたがるっていうか、そういう相手に惹かれるだろ? それに、怜は自分の意志をしっかり持った人間に好意的だ」 「そう。だから、双月くんは貴方と仲が良いのね」 「それ、褒めてるつもりか?」 尾上は、不服そうな顔をしながらも、どこか嬉しそうだった。 「怜はさ、他人とどこか一線引いてる所がある。言い方は悪いけど、ランク付けしてるっていうか。こいつは自分のテリトリー内のここまでなら入れても良い、みたいな。それ以上踏み込まれるのを凄く嫌がるんだ」 「貴方なら、相当深い部分まで踏み込めるでしょ?」 「……そうだな。かなり気を許してくれてるとは思うぜ。でも、手を伸ばして届く距離には入れない」
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