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いつも雨だ。
イベント事には雨が付き物だ。イベント時の降水確率95%。降らなかったら奇跡といいたくなるような出来事。
生まれ時も雨だっただろう。梅雨生まれだからそうに違いない。
今日も朝は雲の隙間から太陽が「おはようございます」していたが、今では雲に隠れ雨になってしまっている。
今日も晴れなかった。晴れるなんてこんな晴れ舞台ではないところでは合わない。
そう友田祐樹(ともだゆうき)は言い聞かせ、小雨の中開催された高校入学式を終える。
―雨は嫌いだ―
こうゆう館内行事は左右されないが、運動会はもってのほか延期するし、修学旅行は傘という荷物が増える。ゲリラ豪雨とか最悪だ。風邪をひいてしまう。なにより雨という天気が、友田や、人の気持ちを億劫にする。
もはや雨=友田祐樹の方程式を崩したくて中学の奴らが選らばなそうな、特に男が、を選択したのだ。
「退屈だな」
見慣れない顔だらけで話す相手もおらず、いきなり担当のハゲ先生に席をごちゃごちゃにされ、そんなんで生徒の顔と名前覚えられるのかと不安になる友田は窓側に追いやられた。友田は外に目をやった。
来る時は傘なんていらなかったのに、友田の晴れるかもという希望は打ち砕かれている。
外は桜の花びらを落とすのを加速させるような、早く夏よ来いと願っている友田の心境と同じみたいな雨が降っている。
「その前に梅雨だろ」
誰も聞いてやいないのに独り言を呟く。誰にも聞こえてないだろう。外の雨音がかき消してくれる。
友田はふと校庭を眺める。水溜りができてたら帰るとき靴がびしょびしょになってしまう。
どこかの普通乗用車がトラックじゃないから平気といって普通のスピードで走ってくるかもしれない。そしたら脚まで濡れてしまう。そんなのは誰もが嫌なことである。
「はっ!?」
へんちくりんな声が出た。今は入学式が終わって自己紹介で皆の顔と名前覚えて仲良くしようの時間なはずだ。なのに、友田の目には傘も差さず、校庭のド真ん中で制服で何かしてる女子生徒がいるのだ。
おかしい。
頭がとち狂ってる。
あいつは幽霊か化け物かに操作されているんだ。
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