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そうとしか思えない。そう思えた。
肌寒いのか紺のカーディガンを着てて、学校指定のスカートなのに恥を知らずにターンやジャンプしてる。その度に短髪がゆれる。踊ってるように見えた。
ただ本当に馬鹿だ。誰もがそう思うだろう。しかし、なぜ誰も気づかないのだろうか、先生の話をきいたり、クラスメイトの容姿を記憶しようと集中してるのだろう。そう思った。
一年生の教室は三階にある。ただ、友田の視力は強めに矯正にしていて、女子生徒の表情は確認できた。
笑顔だ。この憂鬱な雨粒と曇天を弾け飛ばしそうなぐらい輝いてる。まるで太陽だ。あいつを中心に恒星は回ってるんじゃないかと錯覚してしまうぐらいだ。
友田は見とれてた。自分とは違うやつに、こんな天気で、このような状況下で踊ってる女子生徒に目を取られた。
「友田……。友田!」
教室内に響き渡る教師の声。心が飛んでいた友田は我に帰り、機械的に立ち上がる。周りは騒然としていた。ため息や笑い声、完全に友田を注目してる。
周りの目線がレーザービームとなり友田を攻撃する。やめてくれと思った。目立つのがあまり好きでない友田は謝りつつも、
「友田祐樹。誕生日は6月。趣味は読書よろしく」
簡単かつ簡潔に自己紹介を済ませた。友田はさっきの女子が気になり、目線を外に移す。しかし、さっきの手短い時間でさっきの女子生徒は消えていた。あの一分もないような時間で撤退したのか。
「なんだったんだ」
そうぼやいて友田は何事もなかったように机の下に隠してる本を読む。今読んでるのは、夏休み最後の日プールに忍び込んだ主人公がヒロインと遭遇するちょっとSF風味な小説だ。UFOもでてくるらしい。まだ一巻の序盤。物語は始まったばかりだ。
「面倒だ」
ムードメーカーは目立つ。その中心に人は集まるのは当然だ。だから友田はそれを避けていた。それなのに多少ばかり目立ってしまった。つまるところ悪友みたいなやつが出来るかもしれない。お節介委員長が声をかけてくるかもしれない。
今の友田にとって雨音が笑い声に聞こえる。そんなはずないのに錯覚してしまう。
本当に雨は大嫌いだ。傘という荷物は増えて、歩き読書が出来なくなる。雨男と皆から嫌われてしまう。延期した運動会が延期をして、小雨だから雨天決行強行突破でやった中2の運動会が懐かしい。
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