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ある時、仕事が遅くなった俺が部屋に戻ろうとすると、小箱がマンションのエントランスで待っていた。
「来る前に連絡して」と言ったが、小箱はそれをとても面倒くさがった。俺は合鍵を渡して、いつでも小箱が台所に入れるようにした。
小箱は不定期に自宅へ来た。連続して毎日来る日もあれば、何週間も来ない日もあり、来る時間帯も早朝から深夜までまちまちだった。
そして長居をしない。
料理を作るだけ作って、俺が食べるのを見届けるとすぐに帰った。ご飯だけ作られていて、小箱の姿がない日もある。そういうこともあって、俺は仕事が終わると一目散に帰宅するようになっていた。
食卓。
たったそれだけのことが、生活を一変させた。毎日ではないものの、家に帰れば明かりがついていて、小箱が当たり前のように「お帰り」と言ってくれる。
恋人同士ではない俺たちは抱き合ったり、愛を囁きあったりもせず、ただ飯を作りそれを食べ続けた。
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