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泥団子。
幼少の頃、自分でも作ったことがあるソレが並べられていて、その中の一つを俺はしっかりと踏んでいた。足を上げると泥団子は無惨にもバラバラになり、砂に近くなった状態で散らばった。
「せっかく作ったのにどうしてくれんのよっ」
「え、いや、その…」
女に罵声を浴びせられることは何度もあるが、泥団子を踏んで怒られるなんて初めてだ。歳は二十六、七?俺と同じ歳だろうか。いや年齢なんていくつでもいい。大の大人がこんな真夜中に公園で泥団子を作ってるなんて、明らかにヤバい。
俺は静かに後ずさりしながら女から離れようとしたが、逃がさんとばかりに強引に胸ぐらを掴まれた。
「責任取ってよ」
「せ、責任って…俺も好きで踏んだわけじゃないし、そもそもこんなところで泥団子作ってる方がおかしいだろ」
「公園で泥団子作らないで、どこで作るのが普通なの」
「…どこで作るって…その」
「キッチン貸して」
「はい?」
「あんたんち、台所あるでしょ? キッチン貸してくれたら許してあげるわよ」
「なんで俺が貸さなきゃ…」
「なんか文句あんの?」
「いっ!!」
女は俺の股間をぎゅっと握った。痺れるほどの感覚に腰を引いたが、女は手を離さず「キッチン貸してくれるよね?」ともう一度言った。
俺は痛みに耐えながら何度も頷くしかなかった。
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