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それでも僕は気付いている。僕”だけ”が気付いている。文面に興味を持ち、足まで止めてしまっている。誰の仕業なのかも不明だし、目的も分からない”箱”ではあるが、もし本当に僕に見せたいと意図して置いていたならば、まぁ、ここまでは一応成功だと言えるだろう。
とてもそうとは思えない場所に置かれているが。待てよ。そこを僕は不可解だと感じたし、つい興味を惹かれているのだから、この”箱”を仕掛けた者は、やはりどうしても見せたいのかも知れないな、と思い直した。
が、だとすると、この”箱”を置いたやつは、少なくとも僕の性格以上を把握しているということになる。犯人は知人、か。どうも嫌がらせ的な臭いの方が強そうな”箱”だから、動機は怨恨の線で考えよう。刑事ドラマや推理小説では定番の思考ルーチンであるはずだし。
となると、あの”箱”の中身は碌でもない物であるはずだ。陸でも無い、つまりは平らでない、ねじ曲がってひねくれた、僕をがっかりさせるだけの物、ということになる。開けて確認したところで、いいことは何も無いに違いない。
そう考えているのに、僕の足は意に反して”箱”の方へと踏み出した。雑草をさくさくと踏みしめて、僕は真っ直ぐ”箱”を目指している。
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