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なぜなのか? 僕には分かりすぎるほどに分かっている。自分のことなのだから当然だろうとは考えない。ことこういう事態に遭えば分かるというだけの話で、僕は僕自身のことをまだ完全には把握できていないのだ。皆、自分が考えた通りに動いていると錯覚しているだけなのだ。本当は逆なのに。僕から見れば、動いた理由を後付けしている人間の方が、圧倒的多数なのだから。
とまれ、その分かりすぎる理由というのは、この”箱”に書かれている文面だ。文章だ。簡潔にして不明瞭な伝達事項だ。僕の名前はどうでもいい。知ろうと思えば、どうとでも調べられる事柄だ。だが、『未来の貴方』が『入っています』とはどういうことか?
言葉のままに受け取れば、どれだけなのかは知らないが、”未来の僕”がこの箱に収まっているということになる。が、大きさはみかん箱程度だ。どう頑張っても収まりそうにない。これがもし『貴方の未来が入っています』であったなら、僕の未来を象徴するような物が入っているとも考えられるし、その方が自然だ。その辺は考えていなかったのだろうか? 何の確証も持ってはいないが、僕にはそうは思えなかった。
この”箱”を”作った”者は、なんらかの意図を持って、あえて『未来の貴方』としたのだ。そう感じたからこそ、僕は”箱”の前にまで来て、こうして膝をついている。
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