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「私が誰かなど瑣末な問題だよ颪澤くん。そんなことより、その”箱”さ。私はね、颪澤くん。その箱を”開ける”と決めた瞬間に現れる者なのだよ」  何を言っているのか分からない。だが、身なりの立派な紳士であり、言葉遣いも上品だ。気品すら漂うこの紳士の頭を、僕は疑えなかった。 「これは貴方が?」 「いいや、違う。が、関係者ではあるね。監視者、とでも思ってもらえれば結構かな」  紳士はすぅっと”箱”を指差しそう言った。 「さぁ、選び給え、颪澤くん。その箱に、君の未来が、いや、未来の君が入っている。開け給え。そして見給え。その瞬間、箱の中身は確定する。それからどうするのかは君次第。すまないがね、颪澤くん。私が監視者として姿を現している以上、もう”開けない”という選択肢は無いのだよ」  紳士がくつくつと笑みを漏らした。  この後、僕は”箱”を開ける。開けてしまう。  これが、全ての始まりだった―― 
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