お母さんの入院

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昨日はすぐに寝たので、早くから目が覚めた。 卒業までは、もう大学には行かない。 本当は私みたいに就職できてない人は、求人とか見に行かないとダメなんだけどね。 簡単に朝食を食べて、洗濯を干す。 干してる間に凍死しそうなくらい寒い。 部屋に戻り、窓から見上げた空は灰色の雲でおおわれていた。 「雪降りそう」 折りたたみ傘をバックに入れると、綺麗な挿し絵の絵本も大事に入れた。 ぐるっと部屋を見回してから、病院に向かうため家を出た。 傘じゃなくて、手袋を持ってくれば良かった。 コートのポケットに手を入れるがあまり温まらない。 少し前を手を繋いで歩く親子がいた。 幼稚園かな。 子供がかぶっている鮮やかなピンクの帽子が可愛い。 「寒いよー」 「走ったら温かくなるよ。お母さんと競争しようか?」 「お母さん速いからやだー」 「よーいドン」 「お母さん待ってよー」 子供を気遣いながらゆっくり走る母と、一生懸命追いかける子供は、見てるだけで微笑ましい。 あー、また感傷的になってる。 私は、軽くパンパンと頬を叩いて歩き出した。 心臓が悪いお母さんと走ったことはないけど、お母さんとの楽しかった記憶は沢山あるし、今も増え続けてる。 病院が見えてきた。 早く退院できたらいいな…そう思いながら入院棟の入り口のドアを開けた。
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