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「お母さん、おはよう」
「陽菜ちゃん、今日は早いのね。学校は?」
「卒業まで行かないと思うよ」
「そうなの…せっかくのお休みなのに、ごめんね」
「何でお母さんが謝るの?あ、そうだ。今日この絵本にした。懐かしいでしょ?」
「ほんと。懐かしい」
クスクス…とお母さんが笑い出した。
「陽菜ちゃんが初めてお母さんに読んでくれた本だもんね。一冊読みきった後の嬉しそうな顔、お母さん今でも忘れないわ」
入院中も、自宅療養の時も、お母さんはベッドに寝ていることが多く、私はお母さんの側で絵を書いたり、お人形遊びをして遊んだ。
私が退屈になってくると、お母さんが絵本を読んでくれた。
保育園で少し字が読めるようになってからは、自分で読みだしたけど、途中で疲れてしまって「お母さん続きー」と読んでもらっていた。
小学1年の時、初めて図書室で借りたのがこの絵本で、家に帰ってすぐお母さんの前で読み始めたらしい。
「途中で飽きるのかな…って見ていたら、最後まで読みきって、満面の笑顔で「楽しかった?」と聞かれた時、お母さん涙が出たわ」
お母さんが絵本を見ながら、嬉しそうに言った。
あの本は図書室に返却したけど、すぐに本屋さんで購入して、この本は、お母さんと私の宝物になった。
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