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私はゆっくりと本を開けると、読み出した。
初めて絵本を読みきってから、本を読むのは私の役目になった。
私がどんな本を読んでも、お母さんは嬉しそうに聞いてくれる。
「陽菜ちゃんに本を読んでもらうと、縁側で日向ぼっこをしている時ような、幸せな気持ちになるの」
病気で辛そうなお母さんが喜んでくれるのが嬉しく、どうやったら聞きやすいかな?とか、どんな話が好きかな?とか色々考えるようになった。
絵本を読み終わり、お母さんと話をしていると、
「水森さん、検温の時間です」
ノックとともにパソコンの乗ったワゴンを押して、看護師の加藤さんが入ってきた。
「加藤さん、おはようございます。いつも母がお世話になっています」
私が頭を下げると、
「いえいえ。陽菜さん、今日は早いですね」
お母さんに体温計を渡しながら、加藤さんが言った。
加藤さんは、最近増えてきた男性の看護師さん。
私と歳は変わらないみたいだけど、しっかりしてるし、いつも明るい。
「もうすぐ卒業なんです」
「おめでとうございます。式では袴とか着られるんですか?」
質問したあと、ピッと鳴った体温計を受け取り、パソコンに入力する。
「友達と着物をレンタルしようと話してます。袴もいいですね」
「じゃあ急いだ方がいいですよ。早い人は去年のうちにレンタルしてて、ギリギリだと借りれないこともあるそうですよ」
「え?そうなんですか?友達に連絡してみます。ありがとうございました」
「着物姿写真に撮って見せてくださいね。これ、セクハラですか?」
「違うと思いますよ。綺麗に撮れたらお見せしますね」
「楽しみにしてます」
加藤さんは、お母さんにいくつか質問すると、入力して出ていった。
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