382人が本棚に入れています
本棚に追加
加藤さんが出ていくと、
「ねぇ、陽菜ちゃんって付き合ってる人はいないの?」
お母さんが聞いてきた。
「え、いないよ。急に何?」
「加藤君みたいな人はどう?真面目だし、明るいし。お母さん好きだな」
「お母さんが好きでも…。そんな話してたら、加藤さんに失礼だよ。一生懸命仕事してるのに」
「でも、陽菜ちゃんも22歳なんだし。お母さんがお父さんと結婚しようと決めた歳だよ。お母さん達のは勢いだから、参考にはならないけどね」
フフってお母さんが寂しそうに笑った。
お母さんとお父さんが出会ったのは大学の時。
二人とも北海道生まれで、地元の大学に通っていた。
四年になり、いずれは結婚したいとお互いの両親に紹介したら、両家から大反対されたんだって。
お母さんは小さい時から心臓が悪かったけれど、激しい運動さえしなければ日常生活は問題なく送れる程には回復していた。
ただ、結婚して妊娠出産すると心臓に大きな負担がかかり、病気が悪化する可能性があるので、お母さんの両親は一生独身でいて欲しかったらしい。
お父さんの方は、病気を抱えた人と生活するのは大変で、息子には幸せな結婚生活を送って欲しいと反対したらしい。
二人ともすぐに結婚とは思ってなかったのに、反対されたことで意地になってしまった。
お父さんは地元の就職を辞めて今の職場に決め、大学卒業と共に駆け落ち同然で二人で北海道を出てきた。
最初のコメントを投稿しよう!