好きなのに

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ピンポン…ピンポン… 遠くで音が鳴ってる。 ピンポン…ピンポン… あ、玄関のチャイム。 私は慌ててソファーから起き上がる。 …またテレビ見ながら寝ちゃってた。 「はい」 鍵を開けると、和(かず)くんが立っていた。 「コラ、陽菜(ひな)。誰か確かめないで鍵開けちゃダメって、いつも言ってるのに。危ないよ」 「だって。和くんしか来る人いないもん」 「でも、こんな時間だから気を付けないと」 「はーい」 とりあえず返事して、和くんを招き入れる。 「和くんご飯食べた?」 「食べてないよ。何かある?」 「シチューでいい?サラダもあるよ」 「サンキュー」 和くんは、背広を脱いでソファーにかけると、ネクタイを緩めた。 あ、これ、女子がキュンとする男の仕草じゃない? 確かに。和くんってかっこいいから、何しても似合うな。 腕まくりして手を洗ってるだけでもかっこいい。 「いただきます」 美味しそうにパクパク食べる和くんを見てると、ちょっと辛くなる。 何してもかっこいいって反則だよね。 だから、女の子が放って置かないんだよ。 高校生の和くんが、綺麗な女の人と腕を組んで歩いていたのを思い出す。 大学生の時は、女の人が車で迎えに来てたよね。 それで今は… いけない。 和くんは、幼馴染みのお兄ちゃんなんだから。 ただのお隣さんで、3つ年上のお兄ちゃんなんだから。 あ、今はお隣さんでもないのか。
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