382人が本棚に入れています
本棚に追加
「和くん、仕事はどうなの?司法書士って忙しいんでしょ?」
香澄ちゃんの質問に、
「そうでもないよ。大した仕事は任せてもらえてないから。書類作成が主かな」
「でも、難しい仕事なんでしょ?なのに、陽菜のことまで頼んでごめんなさいね」
香澄ちゃんの言葉に、
「お母さん、私なら一人で大丈夫だよ。だから、和くんに迷惑かけるの辞めよう。私の年には、お母さんたち結婚してたんでしょ」
陽菜が答えた。
え…
陽菜が俺から離れるって言ってる?
「俺なら大丈夫。陽菜の様子を見に行ってるだけだし」
少し、慌てて言う。
「でもね、和くん。私そろそろお兄ちゃん離れしないと、いつまで経ってもしっかり出来ないから。だから、和くんはもっと自分の事考えてね」
陽菜がきっぱりと言い切った。
「和くん、和くん言ってたのに。陽菜ちゃんも大人になったんだね」
香澄ちゃんが、感慨深げに言う。
「和くん、今まで迷惑かけてごめんなさいね。陽菜もこう言ってるから、自分の仕事頑張ってね。私たちも和くんに甘えすぎてたわね」
「そうだよ、お母さん。和くん、帰りも遅くて疲れてるんだよ。お休みの日だって、一人暮らしだと色々しないとダメだし」
「そうねー」
「だからね…」
陽菜と香澄ちゃんの話し声は聞こえてるけど、途中から頭に入って来ない。
でも、1つ言える事は、陽菜から離れたくないということ。
負けたくない、看護師にも、あの同級生にも…
お兄ちゃんという立場じゃなく、陽菜に恋愛対象として見てもらえるにはどうしたらいいんだろう。
今までが近すぎて、距離の取り方が分からなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!