離れたくない

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「和くん、仕事はどうなの?司法書士って忙しいんでしょ?」 香澄ちゃんの質問に、 「そうでもないよ。大した仕事は任せてもらえてないから。書類作成が主かな」 「でも、難しい仕事なんでしょ?なのに、陽菜のことまで頼んでごめんなさいね」 香澄ちゃんの言葉に、 「お母さん、私なら一人で大丈夫だよ。だから、和くんに迷惑かけるの辞めよう。私の年には、お母さんたち結婚してたんでしょ」 陽菜が答えた。 え… 陽菜が俺から離れるって言ってる? 「俺なら大丈夫。陽菜の様子を見に行ってるだけだし」 少し、慌てて言う。 「でもね、和くん。私そろそろお兄ちゃん離れしないと、いつまで経ってもしっかり出来ないから。だから、和くんはもっと自分の事考えてね」 陽菜がきっぱりと言い切った。 「和くん、和くん言ってたのに。陽菜ちゃんも大人になったんだね」 香澄ちゃんが、感慨深げに言う。 「和くん、今まで迷惑かけてごめんなさいね。陽菜もこう言ってるから、自分の仕事頑張ってね。私たちも和くんに甘えすぎてたわね」 「そうだよ、お母さん。和くん、帰りも遅くて疲れてるんだよ。お休みの日だって、一人暮らしだと色々しないとダメだし」 「そうねー」 「だからね…」 陽菜と香澄ちゃんの話し声は聞こえてるけど、途中から頭に入って来ない。 でも、1つ言える事は、陽菜から離れたくないということ。 負けたくない、看護師にも、あの同級生にも… お兄ちゃんという立場じゃなく、陽菜に恋愛対象として見てもらえるにはどうしたらいいんだろう。 今までが近すぎて、距離の取り方が分からなくなっていた。
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