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side 陽菜
和くんが病室に現れた時は、びっくりしてすぐに話しかけることが出来なかった。
和くんを解放してあげよう。
そのことばかり考えて、お母さんと夢中で喋っていたら、じっと黙って座っている和くんに気がついた。
こっちの都合で、面倒見ろって言われたり、もういいって言われたり…私ならいい加減にしてって怒るかも。
和くんも怒ってる?
和くんはゆっくり顔を上げて、お母さんを見た。
「香澄ちゃんが元気そうで良かった。俺、仕事途中だから行くね。お大事に」
柔らかく笑うと席をたって出ていった。
「和くん、悪かったわね。まだこれから仕事なんて大変ね。陽菜ちゃん、いただいたゼリー食べる?」
「私、和くん見送ってくる」
慌てて和くんを追いかける。
帰り目も合わなかった。
あんなにそっけない和くんは初めて。
和くんを解放してあげたら、好きだと気づく前の仲の良い兄妹に戻れると思ってた。
だけど、私たちは本当の兄妹じゃないから、和くんに嫌われちゃったら二度と会えなくなるんだ。
「和くん」
遠ざかっていく背中を見つけて叫んだ。
「和くん、待って」
「陽菜…」
和くんが立ち止まって、振り返った。
「和くん、ごめんなさい。私、私ね…」
涙が溢れてくる。
昨日から何度も泣くのを我慢したのに、もう我慢できなかった。
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