離れたくない

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「陽菜、もう大丈夫?」 「ごめん、仕事だよね?」 「そうだね。陽菜、今夜行くから。その時、最近陽菜が悩んでたこと聞かせて」 「わかった。私は遅くても大丈夫だけど、和くんがしんどかったら明日でもいいからね」 「うん、わかった。事務所出るとき電話するから。じゃあ、夜ね」 和くんは、私の頭をポンポンしてからニッコリ笑った。 だから、かっこ良すぎだって。 頭ポンポンなんて、胸キュン仕草が普通に出来るなんて。 和くんを見送ると、なるべく下を向きながらトイレに向かう。 ほとんど化粧してないから、水で顔を洗おう。 目も充血してると思うけど、ハンカチ濡らして押さえたら何とかなるかな。 急ぎ足で歩いていると、誰かにぶつかった。 「すみません」 「いえ、陽菜さんは大丈夫ですか?」 聞き覚えがある声に顔を上げてしまう。 加藤さんだ。 すぐに下を向く。 今日はダメなとこばっかり見られるなぁ。 「私は大丈夫です。すみません、前をちゃんと見てなかったから」 「具合でも悪いのですか?」 「違います。ちょっと急ぐのですみません」 失礼だと思うけど、いかにも泣きましたっていう顔は、やっぱり見られたくない。 加藤さんから離れると、トイレに駆け込んだ。
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