離れたくない

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病室に帰ると、お母さんは寝ていた。 疲れちゃったかな。 寝顔を見つめる。 元気になってくれて良かった。 ベッドの横の椅子に座り、お母さんの手を両手で握る。 あの時の怖さは二度と繰り返したくない… 考えるだけで、いまだに足が震えてくる。 珍しくお父さんから電話がかかってきたのは、去年の5月だった。 私は学生課に就職の相談に来ていた。 お母さんの病気の事もあり、なるべく近くで、残業とかない仕事を探していたが、そんな条件はパートかアルバイトしかない。 「お父さんだ」 めったに無いことに驚きながら、通話にすると、慌てたお父さんの声が聞こえた。 「陽菜、よく聞くんだ。病院から連絡があって、お母さんが急変したらしい」 「え、大丈夫なの?」 「わからない。お父さんも向かってるけど、多分夕方になるから、陽菜だけでもすぐに病院に行って欲しいんだ」 「わかった、すぐ行くから。お父さん、気をつけて来てね」 病院に駆けつけると、処置中ということで、廊下で待つように言われた。 看護師さんが、バタバタと病室を出入りする。 声をかけようとしても、「処置が済むまでお待ち下さい」としか言われない。 単身赴任先からだと、お父さんが来るまでまだまだ時間がかかる。 もし、お母さんに何かあったら…そう考えると怖くてたまらなくなる。 誰かに側に居て欲しくて、和くんにメールを打った。 後で見たら、よく分からないメールだったけど、和くんは直ぐに来てくれた。
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