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「陽菜、香澄ちゃんは?」
「分からない。ずっと処置中なの」
「そっか。陽菜、一人で辛かったね」
和くんは、私をギュッと抱き締めてくれた。
それから、二人で椅子に座って待つ。
漸く先生が出て来て、
「もう大丈夫ですよ。何とか持ち直しました」
「ありがとうございます。あの、母に会ってもいいですか?」
「いいですよ。後で詳しく説明します。時間は看護師に聞いてください。では」
「ありがとうございました」
先生に頭を下げて、病室に入る。
お母さんは酸素マスクをつけて眠っていた。
大丈夫か確かめたくて、手を握る。
あったかい。
体温を感じて、ずっと入りっぱなしだった力が抜けていく。
「陽菜」
和くんが支えてくれなければ、倒れていた。
「あ、ごめん。和くんありがとう。お母さん、大丈夫だって」
「うん、良かったね」
「居なくなったらどうしようって思ってて。すごく怖かった。本当に良かった」
「良かったね。香澄ちゃんも陽菜も、すごく頑張ったね」
そう言って和くんは、もう一度抱き締めてくれた。
それから、お父さんが来るまでずっとついててくれたんだ。
あの時とは違って、お母さんはスヤスヤと眠っている。
顔色もいい。
「お母さん、私やっぱり和くんの側にいたいよ。妹でも、幼馴染みでもなんでもいいから。和くんの一番じゃなくていいから」
お母さん帰るね。
明日また来ます。
メモを残すと、もう一度お母さんを見てから、そっと病室をでた。
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