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「もうちょっと居るよ」
「ダメだよ。和くん疲れてるんだから。この前みたいにリビングで寝ちゃったら大変だから。ね?」
「うん、でも大丈夫。陽菜が寝たら帰るよ。アパートまで10分だし。今日は疲れてないから」
こういう時は、何を言っても無駄なんだ。
和くんは意外と頑固で、折れてくれない。
「じゃあ、お風呂入ってくるね」
「ゆっくり温まって来ること。早く出てきたらやり直しだから」
なるべく早く上がろうと思ってたのに。
仕方なくお気に入りの入浴剤を入れて、肩までつかる。
温かい。
和くんがこうやって私の所に来てくれるのは、私の両親に頼まれてるから。
お隣に住んでた時は、毎日仕事帰りに寄ってくれてたし、一人暮らしした今は、週に1度くらい見に来てくれる。
お母さんは、私が小さい時から入退院をくり返してた。
それでも、私が大学に入るまでは1年の半分以上帰って来れたのに、ここ最近はずっと入院している。
お父さんは治療費と私の学費を払うため、今まで断っていた単身赴任を引き受けて、働いてくれてる。
和くんは、「俺が見てるので、安心してください」って、両親に言ってくれたんだ。
和くんだけじゃなく、お隣の美佳ちゃんにも、おじちゃんにも、本当によくしてもらってるので、一人でも寂しくない。
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