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side 和也
「和くん、もう寝るから」
背中に回っていた陽菜の手がいつの間にかほどかれ、俺の腕を押して体が離れていった。
俺の体を心配してくれているのは分かるけど、なんだか陽菜に拒絶されたような気持ちになって、寂しくなる。
陽菜は俺の事をどう思っているんだろう。
隣の小さな女の子、妹のような女の子であった陽菜を恋愛対象として意識しだしたのは、いつ頃だったんだろう?
あれは確か、俺が高二で陽菜が中二の頃だ。
俺は文化祭の買い出しに、クラスの女子と出掛けていた。
その子は誰にでもフレンドリーな子で、男女問わず腕を組んだり、抱きついたりする子だった。
たまに男子に勘違いされて困ってたけど。
買い出しの時も腕につかまってきたけど、いつもの事なので気にしなかった。
信号で止まった時、道の向こう側を陽菜が歩いているのに気がついた。
買い物帰りなのか、重そうな袋を抱えていた。
「陽菜」
俺の声が聞こえたのか、顔を上げた陽菜がこっちを向いた。
何時もなら笑顔で駆け寄ってくるのに、その時は一瞬立ち止まってから、そのまま行ってしまった。
確かに目が合ったのに…
その時初めて、陽菜は妹じゃないって気づいたんだ。
接点がなくなれば、二度と会えなくなってしまう存在なんだと。
今まで意識しなかったが、3歳離れていると、会おうと思わない限り全く会えないことに気がついた。
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