序章

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「ふう、到着!」 自分の通う、日向(ひなた)高校にたどり着き、自転車を停める。 すると、後ろから聞きなれた私の大好きな声が聞こえてきた。 「空!」 私は振り返りその姿を探す。 その声の主は私に向かって駆けてくる。 「日野先輩! お、おはようございます。」 思わず背筋が伸びる。 それに気づくことなく、日野先輩は私の頭に手をおき、撫でてくる。 「今日は寝坊しなかったな。 偉い偉い。 まあ今日から二年生になって先輩になるんだし当然かな?」 屈託のない笑顔に目を奪われる。 「わ、私だって毎回遅刻する訳じゃないです! ちゃんと朝練に出て先輩みたいにバスケ上手くなりたいですし…」 自分で言って照れてきて、思わずうつむく。 「嬉しいこと言ってくれるな。 大丈夫、空はもっと上手くなれるよ。 さあ、今日も頑張ろう。」 爽やかな笑顔で先輩は歩き出す。 私は先輩が撫でてくれたところに手を添える。 (ああ…好きだな。) 先輩の後ろ姿を見て心のなかでつぶやく。 私は中学生のころから日野明(ひのあきら)先輩に恋をしている。 中学に入って、バスケ部の部活紹介で華麗にシュートを決めていた先輩に一目惚れした。 それからバスケ部に入って、先輩を追いかけてこの高校にきた。 こんな感じでいつも妹みたいな扱いを受けてるけど、私はそれで十分だった。 (やっぱり今日はいい日かも) 「ん? 空、行かないのか?」 「い、今いきます!」 慌てて先輩のもとへ向かう。 新しい学年となった一日目のさいさきの良さに、笑顔を隠しきれなかった。
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