第1章

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ドアの取っ手も錆だらけで、床や壁もそれなりの年季が入っててくたびれていた。 築20年。 2DKのボロアパート。 空き部屋が半分位あって、近隣からは古屋敷だの監獄部屋だのと揶揄されている。 それでも私はこの部屋には満足していた。 価格の割に広々としているし、窓を開けると夕日が望める。 日当たり良好、内装も一回リフォームされてて住むには申し分ない。 ――申し分ないのだが、隣に誰か引っ越してきてからは、何かこう。 言葉にならないなにか奇妙な心地。 どことなく悪寒がするような心地がするようになった。 別に隣から騒音がするわけでもない。 テレビの音も足踏みする音も、ない。 ただ、隣の部屋とを隔てる壁から、染みのようなものができた。 気付いたのは隣の人が越してきてから翌日のこと。 それは日に日に大きくなっている。 コーヒーをこぼしたようなただの染み。 ――なんだけど。 それが野球ボールぐらいの大きさで畳と壁の隙間から徐々に、本当に徐々にだが大きくなり始めていた。 今はバスケットボールぐらいの大きさになっている。 洗剤で拭いてみたりもしたが、全く消えないし薄くもならない。 鼻を近づけて嗅いでみた。
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