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俺はある日、母さんと大喧嘩した。
内容は何だったか、今では切なくなる程、思い出せない。昼飯の魚の骨を母さんが退けてくれずに丸呑みして喉に突っかかったからとか親友のマックスが毒キノコを頭に生やしていたからからかったところを母さんに見られたからとか父さんのことで俺が母さんを責めたからとか。
母さんは泣きながら、叫んだ。
「人間に殺されればいいのよ、アンタみたいな馬鹿息子は!!!」
俺も負けじと言い返す。
「俺ももうこの森には懲り懲りだね。ある物と言えば妄信的な少数の大人とマックスとレイチャーっていうガキと〝サッカーボール〟だけ。美味しい物と言えば、秋に実を付けるイチジク。楽しいことと言えば、人間界で人間として生きていけばどれだけいいか妄想すること。こんな森、さよならだ」
母さんの顔色が変わった。
「森の外に出てはダメよ、それだけはダメ。母さんが悪かったからお願い、ザード、考え直して」
母さんが俺の瞳を一心に見つめ、ガクガク震え出す。それは電圧を加えられた人間をレイチャーが教えてくれた様子にソックリだった。
母さんの恐怖は父さんの死と関係していることは間違いないだろう。
俺はその瞬間に決めた。
父さんの仇を打ってやる。
俺は人間に混じっていつか、お伽話に出て来る〝ジャック・ザ・リッパー〟になるんだ。
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