0人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は鳥の鳴き声で目が覚めた。
黒い馬が俺の頬を舐める。
「チェルシー、お客さんを起こしちゃダメだよ」
屈託の無い笑みを浮かべた中年の変顔した男が俺の方を見ず、馬に言い聞かせる。
俺は戸惑った。エルフ語を言えば俺はお終いだ。
「旅の者でして。芝生が心地良くてそのまま寝てしまいました」
「旅人さんか」
馬主が俺をマジマジと見る。
「その歳で旅人とは偉いね」
「いえ、家族と上手く行かなくなった家出少年の方が合っています」
俺は正直に答える選択肢を選んだ。旅人にしては金を持っていない。
馬主が俺の身体を品定めする。
「それだけの容貌があれば、街に行きさえすれば、年上の女をターゲットに売れるだろう。その1割をワシに回してくれれば、チェルシーの餌が買える。ここのところ売れ行き悪くてね。付いて来てくれないか?」
俺の考える時間は短かった。
「人間の女とヤるのか!いいですとも。是非是非」
馬主の両手を握り締め、ブンブン振る。
馬主は不思議そうに俺を見ていたが、にこやかな笑顔で答えてくれた。
「もしかして初めてになるのか?君ならいくらでも年上の女に抱かれると思うのだが。そうだ」
チェルシーの頭を撫でた後、馬主は改まった表情で頭を下げた。
「カロラ・バートラだ」
最初のコメントを投稿しよう!